●混同しやすい用語シリーズ1~身体図式(Body schema)と身体イメージ(Body image)~

臨床の中で、「あの患者さんはボディイメージが…」、「ボディスキーマが低下していて…」といった言葉を使うことが多々あると思います。

知っていると臨床推論上、非常に都合のいい言葉ですよね。

違いについて説明できますか?



聞いただけ目を背けたくなる人もいるかと思いますが、そんなに難しいものではありません!

今回は、この言葉の違いについて、簡単に整理していこうと思います。

まず、一般的に言われている2つの言葉の定義ですが
身体図式「自分の身体の姿勢や動きを制御する際にダイナミックに働く無意識のプロセス」
身体イメージ「自分自身の身体について意識的にもつ表象」
とされています。



わかったようなわからないような…(笑)


もう少しわかりやすく再定義しますと

身体図式:「実際の感覚」によって作られた「脳のネットワークの中」の自分

身体イメージ:「視覚情報優位」に作られた「記憶の中」の自分

と言えると思います。

運動は身体図式をもとにプログラミングされます。

なので、身体図式はより正確であるにこしたことはありません。

一方、身体イメージは視覚的な感覚を頼りに感情に左右されて、実際の自分とは歪んで記憶されることも多いです。

例えば
ダイエットしてやせたという事実がある=感覚の変化があった
とします。

このとき感覚によって作られる身体図式は軽くなった身体を反映するはずです。

実は、この過程を邪魔する存在が
身体イメージです。

身体イメージは感情と共に記憶に残っているものなので、すぐには変化出来ません。

そして
やっかいになことに身体イメージは感覚情報を歪めてしまうという作用がります。

つまり、中枢神経系が身体イメージにより間違った感覚の取り込みをする事によって身体図式も間違って作られてしまう、という事になります。

もう少し具体的に説明しますと


身体図式は
「自分の身体の姿勢や動きを制御する際にダイナミックに働く無意識のプロセス」と言われており
「実際の感覚」によって作られた「脳のネットワークの中」の自分と再定義しました。

身体イメージは
「自分自身の身体について意識的にもつ表象」と言われており
「視覚情報優位」に作られた「記憶の中」の自分と再定義しました。

まとめると結局

脳が自らの身体を
「無意識的」に捉えるか
「意識的」に捉えるか
の違いと言えます。

もう少し具体的に説明していきますと、
身体図式は
身体のあらゆる感覚情報(視覚、触覚、固有感覚、平衡感覚など)が中枢神経系を上行し、統合されて頭頂葉に生成されるものです。
言わば、無意識的に作られる身体の枠組み、フレームの様なものです。

運動は
この身体図式を基に表出されるので、これらが歪んだり、いびつであれば、運動も非効率的なものになります。

身体図式を使って人に説明するときの注意点として
身体の状況により解釈の仕方がかわるということも抑えておく必要があります。

例えば

「この人は身体図式に股関節が取り込まれていないからうまく股関節が使えないんだよ」

よくある使い方だと思いますが

中枢神経系(脳)に異常はないけど、股関節周囲の感覚がなんらかの理由で感覚野にあまり上行していない場合と

感覚器や構造は正常だけど、中枢疾患などが原因で、脳の中で解釈される段階で歪んでしまう場合がある

といったような違いです。



それに対して、
身体イメージは
自 分の身体を「意識的」に捉えた像になります。個人的な経験をもとに、心理面や視覚的な情報から「自分はこうであるはずだ」という印象を、意識的に、つまり 主観的な要素を含めて記憶したものです。主に左側頭葉を中心に脳の中の記憶がある場所のどこにでも存在し得ると言われています。
身体イメージは主観的な要素を含むため、現実(感覚)を歪めて解釈させてしまう危険を持ち合わせています。
例えば
何らかの原因により身体イメージが「太っている」という風に歪んでしまっている人が、客観的には痩せていても、鏡を見て「私は太っている」と間違った解釈をしたり

大腿切断の人がまだ足が残っている様な感覚を感じたり

身体のある部位に異常がある人で、いつもそこばかり気にしている人がある日、急にそこを誰かに治療してもらって明らかに良くなったとします。機能的にも動作的にも明らかに良いのに、全くその変化に気付けない…
なんていうことも強い思い込みによって作られた身体イメージの歪みが原因かもしれません。


身体図式と身体イメージ。
臨床の中で、症例ごと整理しながら診ていくと、また違った視点から介入ができるかもしれませんね。

※注意
身体図式と身体イメージは神経学者の中でも議論になっていて、まだはっきりした答えのある概念ではありません。他の使われ方をする場合もありますのでご注意ください。

最後に
もし、「そんなの違う。ほんとはこうだ!」というようなご意見がございましたら、是非メールでお伝えいただければ幸いです。
長文となりましたが最後までお読みいただきありがとうございました。