【ワンポイント根知識 vol.2】 『人工膝関節置換術(TKA)のタイプの違いがROMへ与える影響②』

今回は

『人工膝関節置換術(TKA)のタイプの違いがROMへ与える影響②』

です。

まず前回CR型について簡単にまとめると

不安定性や軸のブレなどが生じやすい→関節軸や軌跡をイメージしながら徒手的に介入する必要がある。

でした。

今回はPCLを切離するタイプについて整理していきます。

②PS型(posterior stabilized) ←PCLを切離するタイプ

特徴は

①関節運動軸が安定している
②屈曲に伴う膝窩部の軟部組織のインピンジメントがおこりやすい。

です。

具体的には
・関節運動軸は脛骨側インサート中央部の突起(ポストカム)に大腿骨顆部が噛み合う様にして作られる(ポストカム機構)
・関節軸は機械的に規定されることにより、術後のROM成績は安定しやすい
・ポストカムへ応力が集中することにより、インサートが破損する例が報告されている
・手術手技が容易で、術者による差が少なく安定した成績が得られ易い

以上のように、

PS型は
PCLを切離したことで失った関節軸を「人工的に作り出しRoll back motionを誘導」するのが特徴になります。

臨床的に考えますと

PS型では
関節運動軸は機械的に規定されるので、ROMexにおいて関節運動自体の破綻に起因する問題は少ないと言えます。


ですが
膝屈曲時に膝窩部痛を訴える方を多々経験します。これらは膝屈曲に伴う
「後方軟部組織のインピンジメント」
が原因となっている可能性が高いです。

その場合は、
膝窩筋やハムストリングスを賦活するようにAssistiveにROMexを行うことで解決することができます。
なぜなら、それらの筋は「インピンジメントしないように後方関節包を誘導する機能がある」からです。

また、PS型でのROMexでは
「脱臼」
に注意する必要があります。関節運動時の関節面長軸方向への牽引力は、大腿骨顆部とポストカムの噛み合わせをあまくするベクトルの力であり、脱臼を招く危険があります。

ですので、
軽く「関節面長軸方向へ軸圧をかけながら」実施するように心がける必要があります。

TKAの代表的なタイプであるCR型とPS型の特徴をまとめてきました。

それぞれ特徴があり、これら2つを比較した研究が多く報告されています。
その一部については次回紹介します。


最後までお読みいただきありがとうございました。