第17回セミナー開催しました」

 

『転倒のバイオメカニクスとは』

 

昨年11月に続いて石井慎一郎先生をお招きして,
「Dynamic Posture Control Therapy 安定した歩行を可能にするための新しい理学療法体系」をご教授いただきました

 

「どうしても歩行中の見守りが外せない」
「もう少しで歩行自立できそうなのに、いまひとつ安定性に欠ける」


セラピストであれば日々の臨床で必ず直面する課題だと思います。

 

今回は、人類学をベースとした人間の歩行特性から始まり
ロボット工学やバイオメカニクスの視点から「転倒とは何か」を切り崩し、
それを人間はどのような戦略で制御しているのか。
さらにそれらを構成している要素は何か。
他にも転倒の原因として高い割合を占めるまたぎ動作での健常人と高齢者の特性、歩行中の頸部と眼球運動の関係、Core Control、インテリジェント・リアルタイム・自在歩行システムなどなど。
何を評価して、どんなアプローチをすれば良いか。
デモンストレーションをふんだんに交えながら提示して下さいました。

 

石井先生から繰り出される言葉は、自分の中で変換する必要がなく、スッと頭の中で整理され入っていく。
とにかく分かりやすい!
こちらが深く聞きたい部分は背景も含めてより深く、
そしてイメージが湧きにくい部分は臨床的に具体例をあげながらより詳細に。
まだまだ石井先生の話を聞きたいけど、時間がそれを許さない!
そのくらい短く感じられた1日でした。

 

受講者のアンケートでは

●バイメカを踏まえた転倒予防についてとても勉強になった
●監視から自立への判断が迷うような方の原因や考え方が分かり、今後の介入の参考になった
●臨床ですぐに活かせそう
●新人でも臨床ですぐに使えそうなものを学べてとても勉強になった
●引き込まれそうな講義でまた聞きたい
と大変高い満足度を頂けました。

 

転倒を防ぐには筋力強化や環境整備だけではなく、
機能面にしっかり向き合い介入することの必要性を認識することができました。

石井先生、アシスタントの重枝先生、参加してくださった受講生の皆さま、ありがとうございました。

 


【講義内容】

「歩行が不安定で,近位監視が外せない患者さんにどんなトレーニングをしたら良いか?」
「なぜ高齢者は転倒しやすくなるのか?」
「効果的な転倒予防トレーニングとは?」
「屋内歩行は可能だけど,屋外に出ると急に歩けなくなるのはなぜか?」
「歩行に必要なダイナミックバランスとは?」

 

そんな歩行の不安定性に関わる疑問にお答えする講習を開催しています。
転倒予防教室や理学療法の場面,トレーニングジムなどで働く全ての人に聞いていただきたい内容なんです。

直立二足歩行は力学的に極めて不安定な移動様式だと言えます。
我々が不整地でも自由に歩くことができ、カーブを曲がったり、速度を変えたり、躓いても転倒せずに歩き続けられるのは、動的姿勢制御のメカニズムが存在しているからです。


ただ、脚を前に運び、正常な動作パターン歩行フォームを作っても、患者さんは歩くことは出来ません。
ヒトの歩行フォームを忠実に再現したロボットを歩かせても、すぐに転倒してしまうのと同じように、環境に合わせて動的な安定性を作り出せなければ、実用的な歩行は不可能なのです。


したがって、歩行能力改善のための理学療法の本質は、歩行のフォームを作る事ではなく、動的姿勢制御能力を獲得する事だと言えます。この動的姿勢制御は脳 内ネットワークによって制御されています。よって,転倒リスクを回避するための能力は,脳内ネットワークのトレーニングと言っても過言ではありません。


ただ,筋力を鍛えたり,ストレッチをしたり,バランス訓練を闇雲に行っても効果的なトレーニングにはならないのです。
転倒リスクと認知症は実は脳内ネットワークの機能低下と言う共通した原因を共有しています。脳内ネットワークの機能低下を動的姿勢制御と言う尺度で測れば転倒リスクになりますし,認知機能という尺度で測れば認知症ということになります。
いずれも,脳内ネットワークの機能低下による環境適応低下なのです。

 

歩行の動的姿勢制御に関する最新の知見を集積し、安定した歩行を可能にするための新しい理学療法の体系について講習会を開催します。

【BMT HPより引用】



【講師】石井慎一郎 先生

【所属】神奈川県立福祉大学

【資格】理学療法士 神奈川県立保健福祉大学 教授

保健医療学博士,BMTシニアインストラクター,ISMジュニアアシスタント,風の谷プロジェクトアドバイザー

【最終学歴・学位】

国際医療福祉大学大学院 保健医療学研究科 福祉援助工学分野博士課程・博士(保健医療学)

【専門分野】

筋骨格系理学療法学,バイオメカニクス,運動学

【研究テーマ】

変形性膝関節症の発症メカニズムの解明

基本動作の制御メカニズム

【主な所属学会・審議会等】

日本理学療法士学会

臨床バイオメカニクス学会

【主な社会・地域活動】

三浦市地域包括ケアシステムとリハビリテーションシステムの構築

主な論文・著書

【論文】

石井慎一郎(1989)前額面内下肢関節モーメントからみた変形性関節症患者の歩行パターン 日本臨床バイオメカ二クス学会誌

石井慎一郎(2008)非荷重時の膝関節自動伸展運動におけるスクリューホームムーブメントの動態解析 理学療法科学

【著書】

石井慎一郎(2006)骨・関節系理学療法実践マニュアル 文光堂

石井慎一郎(2010)基礎バイオメカニクス 医歯薬出版

石井慎一郎(2013)動作分析 臨床活用講座 メジカルビュー