【第38回セミナーを開催しました】

 

4/29吉尾雅春先生をお招きして人間としてのリハビリテーションを開催しました。

 

医師や看護師を含め100名以上の方にご参加いただきました。

 

「常識を疑う良識をもつ」

 

吉尾先生は普通だったら諦めてしまうような拘縮、跛行、バランス障害、高次脳機能障害がある脳卒中の患者さんを身体機能的にも人間的にも驚くほど改善した姿を何例も見せてくれました。

 

しかも、他の病院で何ヶ月もリハビリをして良くならなかった患者さんです。

 

3ヶ月程度でかなりの改善をさせてしまう事も珍しくないようです。

 

発症後1年経って全く歩けなかった人が1ヶ月以内に監視レベルで歩けるようになる。

夢のような現実を見せてくれました。

 

しかもそれらは吉尾先生がリハビリをした訳ではありません。

 

吉尾先生の病院の若手療法士がリハビリをして改善させています。

 

いったいどういう事でしょう?

 

脳卒中になることで人は「自発性がなくなったり、痙性が出たり、内反尖足になったり、歩けなくなったり」します。

 

脳卒中だから仕方ない。梗塞範囲が大きいから仕方ない。

 

「私は私の信念や信じる概念に忠実にやるべき事をやった」

 

吉尾先生の病院に駆け込んでくる脳卒中の患者さんを前の病院で担当していたセラピストが言った言葉だそうです。

 

きっと一生懸命介入したのだ思います。

 

しかし、間違いなく患者さんの潜在能力を潰してしまっています。

 

患者さんの回復を邪魔をしているものは何でしょう?

 

もしかしたら「セラピストのエゴ」かもしれません。

 

脳画像をしっかりと読んで残存機能を引き出せていたらどうでしょうか?

それ以前に私達は患者さんをもっと人としてみていく必要があるのではないでしょうか。その人らしさを引き出す介入ができているでしょうか?

 

具体的にどうしたら良いのかは吉尾先生の講義の中でたくさん紹介されていました。

 

世の中の常識、自分の中の常識を疑い、目の前の患者さんを人間として復権させてあげるために何をするべきなのか。もう一度考え直す必要があるのかもかしれません。

 

 


【講義内容】

医療スタッフに「患者にとって環境因子とは何か」を問うと、自宅環境や地域、家族や仲間、職場などの答が返ってきます。

 

間違いではありませんが、極めて一方的すぎる答です。

 

まず何よりも重要な環境因子は、患者の目の前にいる「自分自身」だと私は考えています。

その存在によって患者は180度違った方向に導かれてしまう可能性があるのです。

 

特に脳卒中患者のリハビリテーションにあっては解剖学などの普遍的な学問があまりにも少なく、スタッフたちの言わば経験則や価値観、あるいは好き嫌いで左右されている現状があります。

自宅環境の評価や改造を考える前に、自分自身の能力評価と改造が必要なのです。

患者にとってスタッフが好ましい存在でなければ取り替えることも考えなければなりません。

 

その犠牲になっているのは一個の人間としての患者です。

人間をみる専門家として、もう一度原点に戻って、常識を疑う良識を持ち、何よりも人間のことを考えてリハビリテーションのあり方を考えてみる必要があります。

Maslowの言う欲求階層説からすれば、より下層の普遍的に取り組むべき課題で私たちは躓いています。それよりももっと上層の、より人間的な欲求にチームで迫っていかななければならないのです。

そのためには組織、病院・施設のあり方も見直さなければなりません。

 

人間としての活動や参加を積極的に進めるための取り組みが求められています。

 

 



吉尾雅治先生
千里リハビリテーション病院副院長

医学博士

理学療法士

【略歴】

1974年 九州リハビリテーション大学校理学療法学科を卒業後、
中国労災病院勤務。その後、兵庫・大阪の病院で理学療法士として勤務
1988年~1995年 兵庫医科大学第一生理学教室研究生
1994年 札幌医科大学保健医療学部講師
1994年 大阪学院大学商学部卒業
1995年~2006年 札幌医科大学解剖学第二講座研究員
2002年 博士(医学、札幌医科大学 No.2089)の学位を取得
2003年 札幌医科大学保健医療学部教授
2006年 千里リハビリテーション病院副院長
2007年 死体解剖資格認定(厚生労働大臣 No.8105)

【専門分野】

専門理学療法士(神経 No.99-2-16、運動器 No.3-357、基礎 No.1-186)
認定理学療法士(脳卒中 No.3-13)

日本理学療法士協会 日本神経理学療法学会 代表運営幹事
学会運営審議員 および 元、脳卒中理学療法ガイドライン班長
理学療法ジャーナル編集委員

【著書】

 脳卒中理学療法の理論と技術 改訂第2版(メジカルビュー)、
神経理学療法学(医学書院)、
運動療法学総論第4版 および 運動療法学各論第4版(医学書院)、
股関節のみかたとアプローチ(DVD、ジャパンライム)  など多数