【セミナー後期】

今回は、二月から開催してきた吉尾先生による三回連続セミナーの最終回で、

「脳卒中患者の姿勢制御障害と歩行」を開催しました。

前回に引き続きWEB講習会という形式での開催となりましたが、ご参加いただいた皆さまありがとうございました。

 

今回の講義では症例の写真や動画がふんだんに盛り込まれており、過去二回の講義で得た知識を視覚的なイメージをもって症例の現象に繋げることができました。

例えば歩行の立脚期で麻痺側の骨盤が引けてしまう現象によく出会うかと思います。この骨盤が引けてしまうという現象は脳のどこの障害で起こっているのでしょうか。

これを理解するには脳画像から障害部位がわかるだけでは不十分で、その部位に関連する脳内システムがわかり、実際にどのような現象になるのか視覚的に理解することで症例に生かすことができます。

 

今回の講義も難しい内容でしたが、

まさに脳画像から現象が想像でき、現象から脳画像が想像できる、今回の講義によって前回の二回のセミナーが繋がる内容でした。

そして、最後に吉尾先生がおっしゃっていた運動療法を行う上で量が大切であるということはとても印象的でした。

それは質より量という意味ではなく、質を伴った量が大切であるという、理論に基づいた強いメッセージでした。

 

今回も、医学の知識はもちろんのこと、患者さんに対する真摯な姿勢も学ぶことができる素晴らしい講義でした。吉尾先生ありがとうございました。


【講義内容】

 セラピストは現象をみていく職業だから、画像を見る必要はない、

という声を聞きます。

しかし、現象の受け止め方や障害の理解はセラピストによって千差万別、現象の分析は必ずしも客観的とは言えません。

その最たる手続きが歩行分析とアプローチです。現状のそれは熱が出たから解熱剤だけを服むということと同じようなものです。

そこに脳の画像が加わることでかなりのことが見えてきます。

 

上肢の共同運動はなぜ起こるのでしょうか? 

そもそも共同運動とは何ですか? 

半側空間無視患者が階段をうまく降りれないのはなぜですか? 

プッシング現象はなぜ起きるのでしょう??

 

脳卒中患者の歩行や現象の観察で気づかなかったことも、つまずいている脳のシステム障害の理解も、これからの可能性も、アプローチの仕方もです。

セラピストの責任として、このくらいは理解しながら中枢神経疾患に関わらなければ、と思っていることを具体例を通しながら解説します。

 

現象の受け止め方や障害の理解はセラピストによって千差万別、現象の分析は必ずしも客観的とは言えません。

そこに脳の画像が加わることでかなりのことが見えてきます。

基底核ネットワーク、

小脳ネットワーク、

視覚経路をはじめとする高次脳機能系、

姿勢制御系等、

脳をシステムとして捉えると、いろいろなことに気づきます。

現象の観察で気づかなかったことも、つまずいている脳のシステム障害の理解も、これからの可能性も、です。

 

脳画像はそれらのことを教えてくれるのです。

それが分かれば、自ずとアプローチは見えてきます。

 

このセミナーに参加したら、「片麻痺歩行」という表現はできなくなりますよ。

 



吉尾雅治先生
千里リハビリテーション病院副院長

医学博士

理学療法士

【略歴】

1974年 九州リハビリテーション大学校理学療法学科を卒業後、
中国労災病院勤務。その後、兵庫・大阪の病院で理学療法士として勤務
1988年~1995年 兵庫医科大学第一生理学教室研究生
1994年 札幌医科大学保健医療学部講師
1994年 大阪学院大学商学部卒業
1995年~2006年 札幌医科大学解剖学第二講座研究員
2002年 博士(医学、札幌医科大学 No.2089)の学位を取得
2003年 札幌医科大学保健医療学部教授
2006年 千里リハビリテーション病院副院長
2007年 死体解剖資格認定(厚生労働大臣 No.8105)

【専門分野】

専門理学療法士(神経 No.99-2-16、運動器 No.3-357、基礎 No.1-186)
認定理学療法士(脳卒中 No.3-13)

日本理学療法士協会 日本神経理学療法学会 代表運営幹事
学会運営審議員 および 元、脳卒中理学療法ガイドライン班長
理学療法ジャーナル編集委員

【著書】

 脳卒中理学療法の理論と技術 改訂第2版(メジカルビュー)、
神経理学療法学(医学書院)、
運動療法学総論第4版 および 運動療法学各論第4版(医学書院)、
股関節のみかたとアプローチ(DVD、ジャパンライム)  など多数