【第60回セミナーを開催しました】

今回は、待望の吉尾先生によるセミナー

「脳画像から紐解く脳のシステム障害と予後予測」を開催しました。

 

コロナウィルスの感染拡大に伴いWEB講習会に変更しての開催となりましたが、吉尾先生の協力と皆様のご理解があり実現できました。

当研究会では初の試みであり、至らぬ点も多々あったかと思いますが、ご参加いただいた皆さまや協力して頂いた皆さまありがとうございました。

今回は3月に開催した「脳の基本的な機能解剖と脳画像の見方」の内容を応用し実際の臨床でどう活かしていくか、といった部分に焦点を当てた内容でした。

講義の冒頭ではClinical reasoningについてお話があり、考えさせられました。

私達はClinical reasoningという言葉を良く使いますが、どれだけ根拠をもって理由付けできているできているでしょうか?

私達がしているのはSpeculation=不確実な情報に基づく憶測になっている場合も多いかもしれません。

脳卒中患者さんにおいては、多くの情報が詰まっている脳画像を無視してClinical reasoningはできないと気付かされました。

 

吉尾先生の脳画像読影は、障害の予測だけでなく、残存能力を予測して治療的アプローチに繋げる思考過程を多く学ぶことができました

 

また講義の中では、立脚後期における大腰筋の筋活動と小脳の遠心性線維との関係性や運動学習に必要な要素を細かく提示して頂きました。

 

脳画像だけでなくバイオメカニクスや吉尾先生ならではの解剖学的な知識を含めた多角的な捉え方を学ぶことが出来ました。

それらの1つ1つはものすごく特別な知識ではなく、あくまでそれぞれの基礎をしっかりと積み上げてきた吉尾先生の軌跡を感じることができ、私たちもそこを疎かにしてはいけないと強く感じました。

情報量が濃厚で、人によっては難しく感じる部分もあったかもしれませんが、吉尾先生の臨床感の一端を感じることのできる素晴らしい講義でした。

吉尾先生、受講されたみなさま本当にありがとうございました。


【講義内容】

 セラピストは現象をみていく職業だから、画像を見る必要はない、

という声を聞きます。

しかし、現象の受け止め方や障害の理解はセラピストによって千差万別、現象の分析は必ずしも客観的とは言えません。

その最たる手続きが歩行分析とアプローチです。現状のそれは熱が出たから解熱剤だけを服むということと同じようなものです。

そこに脳の画像が加わることでかなりのことが見えてきます。

 

上肢の共同運動はなぜ起こるのでしょうか? 

そもそも共同運動とは何ですか? 

半側空間無視患者が階段をうまく降りれないのはなぜですか? 

プッシング現象はなぜ起きるのでしょう??

 

脳卒中患者の歩行や現象の観察で気づかなかったことも、つまずいている脳のシステム障害の理解も、これからの可能性も、アプローチの仕方もです。

セラピストの責任として、このくらいは理解しながら中枢神経疾患に関わらなければ、と思っていることを具体例を通しながら解説します。

 

現象の受け止め方や障害の理解はセラピストによって千差万別、現象の分析は必ずしも客観的とは言えません。

そこに脳の画像が加わることでかなりのことが見えてきます。

基底核ネットワーク、

小脳ネットワーク、

視覚経路をはじめとする高次脳機能系、

姿勢制御系等、

脳をシステムとして捉えると、いろいろなことに気づきます。

現象の観察で気づかなかったことも、つまずいている脳のシステム障害の理解も、これからの可能性も、です。

 

脳画像はそれらのことを教えてくれるのです。

それが分かれば、自ずとアプローチは見えてきます。

 

このセミナーに参加したら、「片麻痺歩行」という表現はできなくなりますよ。

 



吉尾雅治先生
千里リハビリテーション病院副院長

医学博士

理学療法士

【略歴】

1974年 九州リハビリテーション大学校理学療法学科を卒業後、
中国労災病院勤務。その後、兵庫・大阪の病院で理学療法士として勤務
1988年~1995年 兵庫医科大学第一生理学教室研究生
1994年 札幌医科大学保健医療学部講師
1994年 大阪学院大学商学部卒業
1995年~2006年 札幌医科大学解剖学第二講座研究員
2002年 博士(医学、札幌医科大学 No.2089)の学位を取得
2003年 札幌医科大学保健医療学部教授
2006年 千里リハビリテーション病院副院長
2007年 死体解剖資格認定(厚生労働大臣 No.8105)

【専門分野】

専門理学療法士(神経 No.99-2-16、運動器 No.3-357、基礎 No.1-186)
認定理学療法士(脳卒中 No.3-13)

日本理学療法士協会 日本神経理学療法学会 代表運営幹事
学会運営審議員 および 元、脳卒中理学療法ガイドライン班長
理学療法ジャーナル編集委員

【著書】

 脳卒中理学療法の理論と技術 改訂第2版(メジカルビュー)、
神経理学療法学(医学書院)、
運動療法学総論第4版 および 運動療法学各論第4版(医学書院)、
股関節のみかたとアプローチ(DVD、ジャパンライム)  など多数